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2013年5月11日 (土)

Alice's Adventures in Wonderland -identity-

独特の世界観をもった「不思議の国のアリス」 世間では女性人気が高いみたいですが、あの何とも言えない不思議な雰囲気が大好きな男子大学生です。
アリスと聞いて何が思い浮かびますか?ディズニーアニメ?それとも他のもの?
色々な商品になり、何度も映画化され、あらゆる作品でオマージュされてきた作品ですが、しばらく前に原作を読んだのでそのお話を少し・・・

主にアリスの原作はルイス・キャロルによる「不思議の国のアリス」"Alice's Adventures in Wonderland”と続編の「鏡の国のアリス」"Through the Looking-Glass"のふたつです。(”Alice's Adventure Underground"というものもありますが、「不思議の国のアリス」の初期版で主な内容は変わりません。)

今回は主に一作目の"Alice's Adventures in Wonderland"のお話をさせていただきます。
(ネタバレあり)

ディズニーの映画を観たことがある人はだいたい大まかなストーリーは一緒です。

白ウサギを追って穴に落ちていった少女アリスがワンダーランドでマッドハッターやチシャネコ、ハートの女王など愉快ながらも理解できないようなキャラクターたちと出会っていくといったお話です。

アリスの物語はアイデンティティを探す物語だといわれています。
アリスはイギリスの上流階級の女の子。レッスンは嫌いでも、同年代のほかの子より、物をよく知っていて、マナーをわきまえています。プライドも高いでしょう。
それと同時に子供ながらの純粋さや適応さや無知や迂闊さも兼ね備えています。
そんなアリスはワンダーランドで、常識では考えられないようなことに遭遇し、体の大きさを変えられ、暗記した暗唱が言えなくなり、白ウサギに召使い扱いされ、今まで信じてやまなかったことを否定されます。そして、青虫に"Who are you?"と尋ねられた時ついにアリスはそれにこたえることが出来ませんでした。
そもそもアイデンティティとはなんでしょう?

「ブリタニカ国際大百科事典(2011)」より抜粋

自分はなにものであるか、私がほかならぬこの私であるその核心とは何か、という自己定義がアイデンティティである。何かが変わるとき、変わらないものとして常に前提にされるもの(斉一性、連続性)がその基軸となる。

つまり、私はこうだから私だ!!と思えるものであり、さらに変わらないものが軸として存在する定義がアイデンティティのようです。(変わる部分があってもよい。)
僕は「不思議の国のアリス」はそのアイデンティティの軸、さらにその中でも精神的な軸を探す物語だと思います。

「あなたは誰?」と聞かれたら、何と答えるでしょう?名前、職業、国籍、趣味、経歴、知識・・・
どれも、立派なアイデンティティです。社会でとても役立ちますし、変わらないものも多いです。しかし、ワンダーランドでは?これらはあまり意味を持ちません。
ワンダーランドでは、その名前自体がそのキャラクターの職業や種族を表しているので、「アリス?そんな動物聞いたことない」という解釈をされ、他のものにとって現実での名前は非常に情報量の少ないものへと成り下がります。現実の職業、国籍、活動、知識も存在しないことが多いので、ワンダーランドへ適合すればするほど、これらのアイデンティティは自分の中でも意味を失っていきます。
たとえ世界が変わっても変わらない精神的な軸が存在し、それが真のアイデンティティである。そして、それは幼少期の純粋さの中にあるものである。
これが、アイデンティティの面からみる「不思議の国のアリス」の主張のように僕には感じられました。

ワンダーランドはアリスの夢の世界です。目が覚めた後、それを姉に聞かせてるのがこの物語です。ディズニー映画では目が覚めたところで終わってしまいますが、原作にはアリスの話を聞き終わった後お姉さんが考えるシーンがあります。
彼女は妹のアリスのこと、彼女が語ったワンダーランドのことを考え、自分でもワンダーランドを想像してみますが、すぐに現実に戻されてしまう。そして、物語の最後はこう締められます。
Lastly, she pictured to herself how this same little sister of hers would, in the after-time, be herself a grown woman; and how she would keep, through all her riper years, the simple and loving heart of her childhood"

おそらくアリスのことを一番わかっているだろうお姉さんは、アリスは大人になっても、子供の様に純粋で温かい心を持った女性になるだろうと考えます。それがワンダーランドを思い浮かべられない自分とは違うアリスのよい特徴。子供の様に純粋で温かい心こそ、なにごとにも左右されないアリスの真のアイデンティティだったのではないでしょうか。しかし、おそらくアリス自身はこれに気づいていない。

アイデンティティというのは自己定義とされながらも、自分のことはあまり意識できるものではありません。ですが、精神的な軸というのは、きっとあるはず。なんとなくでも、それに気づくことができたら、どんな形のワンダーランドでも、楽しむことができるのかもしれませんね。
参考:"Alice's adventures in Wonderland ; and, Through the looking-glass, and what Alice found there"  Lewis Carroll ; edited with an introduction and notes by Hugh Haughton,
Penguin Books, 1998

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